映像に描かれた図書館その後

〜上には上がいる,という話・我等の関心は洋の東西を問わず,という話〜

伊藤 敏朗(東京情報大学)


1.「図書館映画」50本のリストを作成するまで

 本誌Vol.2 No3 において「映像に描かれた図書館」を特集した筆者は、その後も図書館や図書館員を描いた映画にはどのようなものがあるか、探索を続けていたが、本誌の読者からお教えを頂いたり、執筆者の方々からもご紹介を頂いた結果、下記の論文を手元に集めることができた。

1.本多信喜:映画に登場する図書館;みんなの図書館, No.124 (1987.9) pp.34-39
2.滝沢正順:劇映画に現れた図書館と図書館員に関する一考察;図書館界,Vol.39 No.5 (1988.1) pp.195-204
3.村橋勝子:映画の中の図書館とライブラリアン,図書館と本の周辺,第12号 (1988.3) pp.72-82
4.Y.K.:映画にみる図書館;図書館の窓,Vol.28 No.6 (通巻315号, 1989.6) p.64
5.冨江伸治:図書館と映画・テレビ・ビデオテープ イン USA,
 みんなの図書館, No.160 (1990.9) pp.68-75
6.原田安啓:“It's my Library”,北から南から;図書館雑誌,Vol. 84 No.10(1990.10) p.701
7.渡辺幸子:蛍光燈,大学の図書館 (1991.4) p.61

 これらの論文を整理したり、その後に判明したものを採録すると、具体的に図書館(室)が画面に現れる映画に限っても65本にのぼり、筆者はそのうち50本までをビデオで確認できたので、そのリストを作成した (その後の確認分を加え 100本を次頁に一覧表とした)。この他、ビデオ版は入手していないが「アイリスへの手紙」「レナードの朝」といった新しい映画にも図書館が出ているし前前回参考文献とした“The library in America”にスチル写真が載っている“You're a big boy now”(フランシス・フォード・コッポラ監督1966年)などの(日本未公開)作品も図書館が登場すると断定できる。白百合女子大の瀬田氏からは、直輸入版ビデオで“The music man”の、図書館内の大ダンスシーンを見せて頂いた。この他、“Magill's survey of cinema”で検索したものも含め、このテーマの対象映画の総数は概ね90本程度と予想していた。

 以上の調査経過を本誌で中間報告をすることとし、本稿は一旦脱稿した。ビデオ版のストックを眺めながら“これは「図書館映画」という新ジャンルが可能だわい”と一人悦にいっていたのであった。

2.市村省二さん(和光大学)の研究を知って

 6月下旬、当会の永原和雄さん(神奈川工大)から、書誌調査研究分科会の本年度の論文誌『書誌調査』1991年版に、和光大学図書館の市村省二さんという方が「図書館・図書館員が登場する映画と関係文献」という研究論文を掲載する予定との情報が入り、同会世話人の田口令子さん(日本女子大)を介して市村さんとご連絡がとれた。

 さすがに研究を徹底しておられ、筆者の調査を上まわる数の映画と参考文献を採録されていた。上には上がいるもの、奥が深いもの、と重ねて感じいった次第。市村さんによれば、おそらくこのテーマに関する映画は百数十タイトルにのぼるだろうとのことであった。(その後の氏の研究については『図書館雑誌』Vol.86,No.1,p.33-35 参照)

 また市村さんからは、学術情報センターのNACSIS-MAIL の電子掲示板の「図書館職員用掲示板」の「カタロガーの部屋(CAT)」に、お茶の水女子大学図書館の鈴木隆雄さんという方が、「映画の中の図書館(員)」という記事を載せておられることを教えていただいた。

 そこで早速開いてみた所、同掲示板No181('90.12.17)とNo204-206('91.2.27) に同記事が載っており、これがまた実に興味深い話しであった。同記事によれば、「BITNETのBIフォーラムで、図書館員の登場する映画のリストを作っている人のメッセージを見付け」これを同掲示板に転載したとのことであった。そこでは映画やテレビ番組などで、図書館が「重要な登場をするもの」「少しだけ登場するが印象的なもの」「サラッとだけ見えるもの」「テレビ番組」などという5つのグループ別に収集されており、なお情報を求めている。またこのリストの作成には英米の50数人の図書館員の協力があったとのことであった。

 洋の東西を問わず似たような関心を抱く図書館員の存在に嬉しくなるとともに、映像資料の検索手法や文献とのリンクの問題、データベースの構築手法などについて深く考えさせられ、貴重な体験であった。

 今後、第三世界の映画や古典的な映画、或いは市場性に乏しい作品など、図書館ならばこそ収集の意義のありそうなものへの取り組み方なども含め、映画資料の有効な組織化により、その知的付加価値を高める図書館の役割を考えていきたい。

 お世話になった皆様に深く御礼申し上げます。


「視聴覚資料研究Vol.1-3合冊版」 (私立大学図書館協会東地区部会研究部視聴覚資料研究分科会)p.233-235(1992.7)より転載