神奈川県内大学図書館相互協力協議会平成11年度第2回実務担当者会(1999-12-17 : フェリス女学院大学緑園キャンパス)発表要旨

映画で見る図書館・図書館員のイメージ

和光大学附属梅根記念図書館 市村省二

 図書館・図書館員が登場する映画(以下、「図書館映画」と呼ぶ)の調査を始めてから、かれこれ10年近く経つが、このテーマに多少なりとも関心を持っている図書館関係者は多いと思われる。これまでの経験から、図書館映画に対する関心の諸相を類型化すると以下のようになる。(1)世間一般の人々の図書館・図書館員に対するイメージを理解する。(2)古今東西の図書館事情を知る。(3)図書館の自由(読書の自由、利用者のプライバシー保護)の問題に触れるシーンを批判する。(4)図書館建築の事例を学ぶ。(5)特定主題の映像を探索する。(6)映像情報(資料)の目録やデータベースを作成する。関心の幅は多岐にわたるが、映像から何を読み取るか、そのための映像情報の組織化はどうあればよいかを考えるうえで、この題材は、図書館関係者にとっては格好のケーススタディということができよう。

 図書館映画について今日まで関心を持続することができた背景としては、以下の要因があげられる。
1)ビデオ(LD、DVD)の普及
 かつて映画は繰り返して見る、あるいは過去の作品を遡って見ることが困難であり、研究材料にはなりにくいものであったが、ビデオ(LD、DVD)の登場とレンタル店の普及によって、状況は一変した。書物に比べて制約は少なくないが、文献に近い感覚で映画を取り扱えるになったことの意義は大きいと思われる。
2)映画データベースの充実
 近年、Internet経由、もしくはCD-ROMによる映画データベースもかなり充実してきている(例:Internet Movie Database、キネマ旬報シネマデータベース)。紹介文中の言葉や配役名から検索できるデータベースもあり、それらは、作品データの確認はもとより、図書館映画の探索にも大いに役立っている。
3)新しいコミュニケーション・ツールの出現
 Webやメーリングリストなど新しい情報発信・情報交換手段の出現も見逃せない。これらを利用することで、情報入手や情報交換の範囲が飛躍的に拡大した。

 それでは、映画に描かれた図書館のイメージとはどのようなものであろうか。以下に特徴的と思われるものを列挙してみた(かっこ内に1980年以降の作品例を付記した。下線は邦画)。
1)図書館は静かにするところ(「きっと忘れない」「That'sカンニング!」「耳をすませば」)
2)図書館は心が落ち着くところ(「ペンギンズ・メモリー」「セブン」「シティ・オブ・エンジェル」)
3)図書館は整然としたところ(「ゴーストバスターズ」「猫のように」「パーティーガール」「ハムナプトラ」)
4)図書館は神聖(まじめ)なところ(「スリーサム」「ボーン・イエスタディ」「もうDEBUなんて言わせない!
5)図書館は勉強するところ(「恋する女たち」「ミスター・ソウルマン」「パッチ・アダムス」)
6)図書館は知識・情報を得るところ(「ある日どこかで」「ロレンツォのオイル」「ひみつの花園」「リング」)
7)図書館は人と出会うところ(「ワン・モア・タイム」「さよなら、こんにちは」「トゥルーマン・ショー」)
 1)3)4)について、そうしたものにある種の抑圧を感じる人々も少なくないようで、大声を出して周囲の人々の注目を浴びるなど、対極的な描き方をする例は多い。5)は学園ものに多く、アメリカの学生はよく勉強していることが映画からも窺える。6)はどの館種でも見られるが、公共図書館では過去の新聞記事、大学・専門図書館では、専門主題の情報を求める例が多い。

 次に映画の中の図書館員のイメージであるが、ここでは代表的と思われるものを3つあげておく。
1)図書館員は地味である(「耳をすませば」「(ハル)」「パーティーガール」「ブラック・マスク」)
2)図書館員は親切である(「ある日どこかで」「パロディ放送局UHF」「ロレンツォのオイル」)
3)図書館員は知的である(「メジャーリーグ」「侍女の物語」「パーティーガール」「ハムナプトラ」)
 1)は図書館の仕事の性質に由来するものであろうか。また、主役が図書館員の場合、過去にある種の挫折を体験して、心の傷を癒すために図書館に勤めるといった例や、内向的な、もしくは心に鬱屈したものを抱えている図書館員が非日常的な出来事や恋愛を経験することで魅力的な人間に変身するといった描かれ方は国内外を問わず共通して見られる傾向である。2)3)は欧米映画に見られるものであり、残念ながら日本ではそのようなイメージで描かれたものは皆無に近い。

 こうしたイメージは、単に作り手の意識の反映に過ぎないと考える向きもあろうが、実際はそうではない。映画では、それが虚構であるが故に、観客に受け入れられにくい、突飛な描かれ方はされないものである。映画は、外の世界を覗く窓であると同時に、人々の心を映す「鏡」の役割を担っているのであり、図書館に対する社会的な認知・関心の度合いを測る指標として、その描かれ方にもっと注意が向けられてよいように思う。また、肯定的なイメージを大切にしつつ、否定的なイメージを払拭していく取り組みも必要であろう。そのためには、現場での日常的な実践の積み重ねもさることながら、館界として、明確なイメージ戦略を持ち、社会に対して大規模な広報活動を行うことも、時として必要と思われる。21世紀の図書館・図書館員像を描く際に、映画を含めた映像メディアから得られるもの、あるいは学ぶことは、多いのではないだろうか。
*図書館映画関連サイト
http://www.bekkoame.ne.jp/~ichimura/


神奈川県内大学図書館相互協力協議会会報. No.23, p.2-3, 2000.3より転載